携帯電話問題で対立してきた菅 義偉 氏が第99代内閣総理大臣に任命されて以来、しばらく株価の低迷が続くKDDI(9433)、8月の中旬には3,350円前後の値を付けていた同社の株価はわずか1か月で20%以上も下落。
中間配当の権利落ち日が過ぎた9月30日には、株価が一時2,604円(年初最安値更新)付近まで売り込まれるなど、菅内閣の誕生後にKDDI株は750円以上も下落しました。
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今年のKDDIは営業利益1兆円超で業績が好調なのに
今年のKDDIの業績はかなり好調で、新型コロナの影響で航空業界や観光産業が大打撃を受けるなか、KDDIは在宅勤務やテレワークの需要増で2021年3月期の決算(予想)は売上高5兆2,500億円、営業利益は1兆300億円と10年連続で過去最高記録を更新予定。
■引用元URL→https://www.kddi.com/corporate/ir/individual/result/
KDDIの2021年3月期の年間配当は120円で19期連続の増配を予定しており、9月18日時点の株価で配当利回りは4.63%の高い水準を維持している。
しかし現在の通信会社は携帯電話料金の値下げ問題で業績の先行きが不透明&将来の収益低下が予測されているため、ここまで株価が値下がりしており、料金の値下げ内容次第で更に株価が一段下落する可能性を残しています。
KDDIの株価はいったいどこまで値下がりするのか?
■今後のKDDI株の値動きを予想するにあたっては過去の株価チャートが参考になる
携帯電話料金の値下げに絡む問題で通信会社の株が値下がりするのは今回で4回目で、2018年10月に大手通信会社の株が大暴落した時はたったの1か月でNTTドコモやKDDIなどの株価が直近の高値から25%以上も下落しました。
時価総額4.9兆円が吹き飛んだ「ドコモショック」を忘れるな!
この時はNTTドコモが2018年10月31日(水曜日)の第2四半期決算で、最大4,000億円の消費者還元と最大4割値下げされた新料金プランの発表を同時に行ったのだが、この決算発表の影響で翌日11月1日(木曜日)の通信セクターは朝から大暴落。
NTTドコモの株価は前日比-418円の2,426円(-15%)で1998年の上場以来、最大の下落率を記録。親会社であるNTT(日本電信電話)の株価は前日比-700円の4,050円(-15%)でストップ安。
KDDIは前日比-454円の2,360円(-16%)で10年ぶりの下落率。ソフトバンクグループも前日比-738円の8,310円(-8%)と2016年以来の下げ幅だった。
過去のチャートを参考にした場合のKDDI株の底値は2,400円~2,500円
仮に今年も2018年と同じように株価が25%下落したと仮定すると、KDDIの株価は2,400円~2,500円前後、2018年11月の最安値(2,331円)を意識するなら株価は2,345円前後まで下がると予測される。
■8月の高値を3,350円に設定した場合の株価と下落率の計算 ・3,350円→2,500円(-25%) ・3,350円→2,400円(-28%) ・3,350円→2,345円(-30%) |
現在のKDDIグループは2015年から続く「携帯電話料金の値下げ問題」の危機感から、物販や金融など通信事業以外からの収益増加を目指していて、au PAYを始めとしたキャッシュレス決済の展開、auじぶん銀行の連結子会社化、auでんきによる顧客の囲い込みで売上増を狙う。
この販売戦略はYahoo!ショッピングやPayPayモール、おうちでんき、ジャパンネット銀行などを保有するソフトバンクの後追いなのだが、このおかげでソフトバンクは売上高4.7兆円のうち、モバイル部門の売上高は1.6兆円に過ぎず、携帯電話料金の値下げによる減収要因を補っている。
※ちなみにソフトバンクは2020年秋以降にYahoo!事業の全てPayPayブランドに統一して更なる収益の向上を図る予定である。
KDDIグループも携帯料金の値下げにより一時的に収益が大きく低下するかも知れないが、これから5G回線の普及やIoT技術の発達で、ARPU(1ユーザーあたりの売上金額)の向上、自動車の自動運転が実現すると全車種に通信機器の搭載などで、年間の売上高は右肩上がりに成長することが期待できる。
短期では新型コロナの感染拡大(第2波)の影響による世界同時株安や、予想を越えいた携帯電話料金の値下げでKDDIの株価が2,400円を割るかもしれないが、3~5年単位の長期で見ればインフレの継続による物価の上昇や、異次元の金融緩和による貨幣価値の下落も合わさり、KDDIの株価は再び3,000円以上に上がると思っている。
これからKDDIの株を購入しようと思っている人はどんな点に注意すべきか?
現状、KDDIの株価の下限は2,400円前後だと予想しているが、これは携帯電話料金の値下げが1~2割程度で収まることを前提に株価を計算している。
2018年10月に「携帯電話料金の4割値下げ」が実行された時は、最大4割値下げは「家族割りの適用」+「光回線セット割り」+「6か月の期間限定割引き」を合計した場合の金額であり、実際の通信料金の値下げは1割程度で、端末の割引きが減少した分トータルの支払いは変わらないという皮肉な結果となったので、通信会社の株価は1年くらいで元の株価に戻ったのだが
【関連記事】→日本の携帯電話料金は世界一高いと言われるその理由とは?2020年版
もし政府が本気で携帯電話料金の4割値下げで動いたら通信会社の株価は大変なことになる
携帯電話料金が本当に4割下がると通信会社の株価は大変なことになる
日本の携帯電話料金が高額だと言われるのは主にスマートフォン向けの料金体系で、いわゆる携帯電話(ガラケー)向けの料金は通話のみなら月額980円(税別)と世界的に見ても割安な部類に入る。
いっぽうでスマホ向けの料金は一人当たり携帯電話会社に毎月平均6,000円前後支払っていると言われ、近年はスマートフォンの高性能化に伴う価格の上昇で、端末代を含めると1か月で1万円以上も携帯電話代にお金が消えるユーザーもいる。
今回の携帯電話料金の値下げで注目されるのはこのスマホ料金であり、今後のKDDIの株価を予想するうえで非常に重要な要素となる。
■携帯電話料金(スマホ料金)の値下げが1~2割程度で収まる場合
au携帯の契約者数は2020年9月末時点で約2440万人であり、このうちスマホ利用者の割合が7割と仮定すると、スマホ契約者の人数は約1,700万人となる。
仮に今回の携帯電話料金の値下げで1人辺り月1,000円(約2割)の値下げを実施したとすると
・約1,700万人×月1,000円値下げ=1,700億円前後の減収
2020年3月期決算のKDDIグループ全体の売上高は5兆2,300億円、営業利益は1兆250億円なので、この程度の減収要因なら余裕でカバーできると思われる。
■携帯電話料金(スマホ料金)の値下げが4割値下げされた場合
もし今回の携帯電話料金の値下げ問題で政府が強硬に料金の値下げを要求してきて、スマホ料金が一律2,000円(約4割)値下げされたとすると
・約1,700万人×月2,000円値下げ=3,400億円前後の減収
これに追加で一般家庭向け料金値下げに伴い、法人向けの料金プランも値下げになったとすると、売上高の消失は4,000億円を超えると予想され、例え設備投資の減額や消費者還元を減らしたとしても、収益・営業利益減はカバーできず、年間配当の「減配」も絡んでKDDIの株価が2,000円を割るような、大幅な株価低下を招く恐れもある。
新しく総務省に就任した武田総務大臣が有能な人材であれば、ここまで無茶要求はしてこないと思われるが、首相や国民からの圧力、政治的パフォーマンスのリスクを考える必要がる。
【まとめ】KDDIの株価はどこまで下がるのか?KDDI株を購入予定なので今後の株価を予測してみた
最後に今回の記事で重要な点をまとめると
・KDDIの株価の下限は2,400円~2,500円前後。 ・新料金プランの内容次第で2,400円を割り込む可能性もあり。 ・料金が一律4割値下げになるとKDDIの株価が2,000円を割るリスクあり。 |
KDDIの株価が2,000円を割るような事態は、余程のことがない限り現時点で可能性は低いと考えているが、KDDI株を購入する上でのリスクとして、いちおう頭の片隅に入れておいたほうがいいと思う。
これからKDDIの株を新規or追加購入しようと思っている人は10月29日以降、携帯電話各社の決算発表を待ってからがおすすめ。KDDIの将来性や業績を考えると結構買い時な株ななのだが、まだまだ不確定要素も多いので、安全策を取るなら新料金プラン発表後の値動きを見てから、KDDIの株を買っていったほうがいいでしょう。(上昇トレンドを確認してからKDDI株を買い始めて遅くはない)
■携帯電話会社の第2四半期決算の発表時期
・NTTドコモ・・・2020年10月29日(予定)
・KDDI・・・2020年10月30日(予定)
・ソフトバンク・・・2020年11月4日(予定)
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