■楽天証券で楽天モバイル債の販売を開始。
■販売期間は2022年5月30日(月)~6月10日(金)
■債券の年間利率は0.4%~1%で償還期限は3年間、買付単位は一単位50万円から。
■楽天モバイル債の年利率は0.72%(税引き前)に決定。
■債券の発行から1年以上が経過すれば途中で売却が可能。
■楽天モバイル債とは愛称であり、本債券の発行体は楽天グループ株式会社。
■楽天モバイル債の正式名称は楽天グループ株式会社第21回無担保社債。
目次
50万円の楽天モバイル債を購入するリスク
楽天モバイル債の正式名称は「楽天グループ株式会社第21回無担保社債」で、要は楽天グループが発行する社債になる。
債券の種類は担保が設定されていない「無担保社債」なので、楽天グループが倒産したり社債が債務不履行になっても「額面金額」や「利払い」は保証されない。
過去に販売されたソフトバンクの無担保社債が年率1.38%~2.48%前後なので、それと比較すると楽天のモバイル債は利率が低い。年々、楽天グループの発行する無担保社債の支払い利息が増えているのも気になる。それだけ信用力が落ちてるということだから。
楽天グループが3年以内に倒産するリスクについての考察
楽天の2021年12月期の連結決算は携帯電話事業が約4,211億円の赤字を出してるのに対し、最終損益が約1,338億円の赤字と、携帯以外の他の事業がしっかりと利益を稼いでいるので、3年以内に楽天が倒産することはないだろうが、これからも楽天モバイルの通信基地局を整備するため、毎年3,000億円~4,000億円の設備投資費が掛かるとすると、経営体力的に楽観視もできない。
【補足】ちなみに通信基地局に対する設備投資は「固定資産」に変わるので、毎年1,000億円程度の赤字なら楽天は倒産しないと思ってる。ただ長期投資する場合は「世界情勢の変化(戦争やリーマンショック級の金融危機)」や「地震等の災害リスク」も考慮しないといけないので、その点で「楽観視」もしないほうがいいと考えている。
0円料金の廃止&月額980円(税別)の有料化とKDDIのローミング費用減で楽天グループの最終損益はあと1,000億円くらい減らせそうだけど、今後も稼いだ利益の大半が楽天モバイルの設備投資で消えてくのは痛い。
■大手携帯キャリアになると全国の通信インフラを維持するだけで最低3,000億円(年間)かかる。
■これから楽天がプラチナバンドを獲得すると通信基地局の更新に+1,000億円(1~3年間)くらい。
楽天モバイルが携帯キャリアとして本格参入した2019年から2021年までの設備投資費が約1.5兆円と仮定すると、あと最低0.5兆円(約5,000億円)は掛かるはず。それくらいゼロから全国に通信基地局を設置するのはお金が掛かる。
最終的にKDDI辺りに携帯電話事業(楽天モバイル)を売却することになるのではないかと思ってるけど、どうなることやら・・・
ソフトバンクが携帯電話業界に参入した頃より厳しい
携帯電話業界はソフトバンクが新規参入した頃と違って今は、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクに加えて、MVNOの格安スマホも相手に戦わなきゃいけないので、楽天は相当厳しい立場にあると思う。これから自動運転の普及などでデータ通信の需要は増えるわけだが、そこに楽天がどれだけ食い込めるか。
楽天の業績見通しだと22年の第一四半期が赤字のピークで、その後はどんどん収益が改善していくみたいだけど、これがどれだけ目標を達成できるか。携帯電話事業単体で黒字転換するのは相当先(たぶん毎年4,000億円前後の赤字が出るはず)になると思うけど、楽天携帯とのシナジー効果で楽天市場や楽天トラベルといった、他の事業でどれだけ利益を増やせるかが重要になる。
■楽天モバイル単体の決算
売上高 1568億0300万円 (+16.0%)
営業利益 ▲4163億4300万円
経常利益 ▲4229億6600万円
純利益 ▲3262億3200万円
利益剰余金 ▲5420億7400万円今年は楽天モバイルの赤字が前年より1,000億円減、楽天グループ全体の連結決算で最終損益を±0円くらいまで持っていけるか注目。
楽天は楽天モバイル債や楽天銀行の新規上場で資金を確保
楽天は今回の楽天モバイル債で約1,500億円の資金を確保予定。
↓他にも楽天銀行の上場でおそらく1,000億円程度の資金を確保できるはずなので、2~3年で事業資金が枯渇して倒産という事態にはならないと思う。
ただ最近は楽天グループ自体の株価が下がり続けているので、本当のピンチに陥ったときに銀行からお金の借り入れがちゃんとできるのか、ちょっと心配。
楽天グループの株価は年初来安値更新
楽天グループの株価は第一四半期決算の通過で一時的に価格を戻していたのだが、新料金プランの発表で0円料金の廃止を決定すると、他の携帯電話会社へのユーザー流出を懸念してか、株価が年初来安値更新。
逆に楽天携帯からの転出先として利用者が増えそうなKDDIやインターネットイニシアティブ(IIJmio)の株価は急上昇しており、機関投資家が楽天モバイルの値上げについてどう考えているのか、株価の値動きから読み取れる。
今後、楽天グループの業績※①がどうなるか判断するにはまだ早いが、個人的には楽天モバイル債(楽天無担保社債)の年率は0.4%~1%なので、同じリスクを取るならまだソフトバンクの無担保社債(年率1.38%~2.48%)を買ったほうがいいんじゃないかと思う。
※① 料金の値上げが業績に反映されるのは11月の第3四半期決算以降と予想。
投資目的で楽天モバイル債を買うのは不適合
更に突っ込んだ話をするなら日本郵政の株を50万円分NISA口座で購入して3年保有(配当利回り5%以上×3年=15%相当)したほうがリターンが高い。最近の日本株は業績が良いのに配当利回りが5以上の銘柄が沢山あるし、株なら50万円分をある程度分散して投資できる。
楽天モバイル債は損失リスク覚悟で楽天を応援したい人が買う社債みたいな。正直言って投資目的として買うような金融商品じゃないことは確か。
楽天グループには頑張って欲しいけど、投資対象としては厳しく見ないといけない。
▼次の記事 楽天銀行の新規上場について考察してみた