暴落中の東北電力の株を買う予定なので買い材料などをまとめてみる。
どれだけ収益が改善しそうなのか計算してみた。
目次
燃料費調整制度の上限撤廃で約490億円
東北電力では2022年度に燃料費調整制度の上限による負担が約490億円発生。
これが2022年12月分の電気料金から「燃料費調整制度の上限撤廃」で燃料価格の上昇分をちゃんと電気料金に転嫁できるようになるので、この約490億円分の赤字が来年以降はなくなるはず。
例えば具体的な数字を出すと9月分の電気料金は燃料費調整制度の上限があるため、1kWh当たり4.20円の損失(東北電力が負担)が発生しているが、12月分の電気料金から100%電気料金に転嫁できるようになれば赤字金額の縮小が期待できる。
2023年3月期の東北電力の経常赤字が約2,000億円なので、単純計算で約4分の1の赤字(約490億円)が減らせることになる。
2022年3月 福島県沖地震の影響 約720億円
2022年3月に発生した福島県沖地震の影響による損失が今年は約720億円。
これが2023年1月までに仙台火力発電所 4号(46.8万kW)を除いて全部復旧予定なので、来年は福島県沖地震の影響による損失がもっと減るはず。
7基の火力発電所が停止して約720億円の損失(1基当たり約100億円)と考えると、停止中の火力発電所は残り1基になるので、来年の損失は100億円以下※①になるかも?
※①ただし2022年以降に地震や水害といった大きな自然災害が発生しない場合に限る。
福島県沖地震の影響で停止中の火力発電所復旧で数百億円
東北電力では割高な卸電力取引市場から電力を購入することで、2022年度は約▲880億円の受給関連収支が発生している。
これが福島県沖地震の影響で停止中の火力発電所が復旧すれば、足らない分の電力を卸電力取引市場から買う必要がなくなるので、200億円~400億円くらいは赤字が減らせるのではないかと考えている。
※例えば卸電力取引市場から購入している電力量を30%減らせれば、約264億円(880億×0.7=264億円)の赤字が減らせるのではないか?という感じです。
円高で約300億円の収益改善効果(予測)
2022年7月中旬に1ドル140円近くまで円安が進行したドル円が、米国の景気後退観測が浮上すると半月で131円まで9円ほど円高に逆戻りした。
現時点で来年の為替がどうなっているか正確に予想するのは難しいが、米国の景気後退入りでドル円は115円~125円程度まで円高が進むのではないかと思っている。
東北電力の場合、為替レートが1ドル円高になるだけで65億円の収益改善効果が期待できるので、もし2023年に1ドル125円くらいまで円高が進むとしたら、約325億円くらいは赤字が解消できるかも知れません。
燃料消費量の削減効果はあまり期待できない
東北電力では価格が4~5倍に高騰した石炭の消費量は前年の半分程度に低下しているが、天然ガス(LNG)の使用量は前年からさほど変わらず。天然ガスはウクライナ問題に絡む関係で欧州で価格が高騰が続いており、今後半年以内に価格が下がる可能性は非常に低い。
よって燃料負担減にはドル円の円高が必要になるが、米国の利上げが止まらない限り極端な円高も期待できないので、消費燃料価格の下落で赤字解消はまだ先になると思われる。
女川原発が2024年4月以降に再稼働
東北電力の最新の決算説明資料によると女川原子力発電所の営業運転が2024年4月以降に開始予定なので、原発が再稼働できれば多少は収益の改善効果が得られるかな?とは思う。
ただ稼働可能な原子力発電所を4基保有している九州電力でさえ、2022年7月29日の第1四半期決算は▲472億円の赤字状態なので過度な期待は厳禁!
関西電力ように機関投資家の資金が集中すれば株価が20%くらい上昇する可能性があるが、九州電力のパターンだと女川原発の再稼働が全くプラス材料にならない場合も想定される。
無配による支出の削減効果が約200億円
東北電力は2022年7月29日(金曜日)の第1四半期決算で中間・期末配当が0円になると発表、東日本大震災後の2012年以来、約10年ぶりに完全無配に転落した。
2020年に年間40円あった配当が0円になることで、東北電力は毎年200億円の配当支出が削減できる。既存株主にとっては痛いニュースだが、東日本大震災後の配当推移を参考にすると5年間で約600億円の支出削減効果がある。
電気料金の値上げで約1,250億円+αの収益改善効果
東北電力では12月分の電気料金から燃料費調整制度の上限が撤廃できるため、一般家庭向けの電気料金が約13%(約157万件)、工場や商業施設向けの電気料金が約16%~18%値上がり(約6万件)する。
工場向けの電気料金は年間 最大 約2,000万円の値上げ
工場や商業施設などの大口顧客に関しては値上げによって月の電気料金が11万円~165万円(165万円×12か月=1,980万円)の値上げになるため、東北電力の収益が大きく改善することが期待できる。
また東北電力の試算によると、燃料費調整単価の上限撤廃で一般家庭の電気代負担が12月分から月平均1,000円(+13%)増加。これが約157万件。収益改善効果は12月、1月、2月。3月の合計4か月分で計算してみると。
月1,000円×4か月×157万件=約63億円くらいは売上高の増加が見込める。
これが丸々東北電力の利益になるかは分からないが、平均燃料価格が変わらないと仮定すると、家庭向けの電気料金だけで年間 約252億円くらいの収益改善効果が期待できる。
大口顧客の電気料金値上げで年間1,000億円の収益改善効果あり?
工場や商業施設向けなど大口顧客の電気料金は月100万円~1,000万円と幅広いので平均値を計算するのが難しいが、約6万契約の電気料金が平均16%~18%値上げとなると、東北電力の収益は年間1,000億円程度改善するのではないかと見ています。
※予想誤差±200億円程度。
※大口顧客は基本料金も1契約当たり350円値上げされるので年間 約2億円の収益改善効果が見込める。
最低でも燃料費調整制度の上限超過額による損失 約▲490億円を回収できるくらいの値上げにはなるはずなので、来年以降の収益改善に期待できる。
【まとめ】2023年以降 どこまで業績改善できるか考察
■2023年に改善が見込めそうな項目
・卸電力取引市場の価格上昇影響 約880億円
・燃料費調整制度による上限超過額 約490億円
・2022年3月 福島県沖地震の影響 約720億円
・年間40円の配当を0円に 約200億円
①福島県沖地震の影響減による損失減が約500億円
②火力発電所の復旧による卸電力取引市場の影響減
③燃料費調整制度の上限撤廃による損失減が約490億円
④年間配当40円を0円にすることで約200億円の支出削減
東北電力は①と③④の効果により2023年度は経常赤字が約1,000億円前後、②火力発電所の復旧による卸電力取引市場からの調達減により追加で経常赤字が200億円~300億円前後の、来年は合計1,300億円くらい経常赤字を削減できるのではないか?と考えています。
あと来年は電気料金の平均15%値上げで売上高が2,400億円増加するはずなので、営業利益率 5%~10%で計算すると120億円~240億円程度は利益が追加できるかも知れない。
東北電力は2024年3月期に黒字化の見込み
東北電力の社長の話では「電気料金の値上げ」と「燃料費調整単価の上限撤廃」で、東北電力は2024年3月期(2023年度)に黒字化を達成できる見込みで、意外と株価の復活は早いかも知れない。
2023年以降も懸念されるリスク要因(約1,000億円程度)
2023年度に黒字化予想の東北電力の業績が下振れるとしたら以下の要因が考えられる。
■2023年以降も懸念されるリスク要因
・台風や大雪・地震による特別損失の発生(100億~700億円程度)
・燃料価格(石油、石炭、天然ガス)の更なる高騰
・ドル円レートが135円~140円前後で推移する(1ドル65億円の負担増)
2022年度のドル円レートの見通しが130円なので、平均レートが135円になるだけで経常利益が予想より325億円くらい減る。また燃料価格(石油、石炭、天然ガス)が高騰した場合、原油CIF価格(1$/bbl)=27億円の負担増になるので、これも利益の圧迫要因になる。
また電力会社は「台風」や「大雪」「地震」といった自然災害も付きものなので、大規模災害によって特別損失が発生するリスクが常にある。
■2022年8月4日(水)に福島県と宮城県で最大震度4の地震が発生。
■2022年8月5日(木)に福島県と山形県で鉄道の鉄橋が流されるほどの集中豪雨が発生。
■東日本大震災のあった2011年も東北地方で大規模な水害が起きた過去がある
新潟・福島豪雨による東北電力の水力発電所の被害状況と今後の対応について
当社においては、平成23年7月に発生した新潟・福島豪雨の影響により、新潟県、福島県で合計29箇所の水力発電所が被害を受けており、現在も25箇所の発電所が停止しております。
調べてみると2011年に起きた「新潟・福島豪雨」による経常損失が約140億円、経営状況が厳しい年に限って大規模な災害が起きてる感じがする・・・
2022年3月みたいに地震で広範囲の火力発電所が停止すると、また700億円程度の損失につながるので東北電力に投資する際は、この辺りのリスクを考慮しておきたい。