米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が8月27日に行われたジャクソンホール会議で、量的緩和を段階的に縮小するテーパリングについて、年内に始めるのが適当だと自らの認識を強調。
8月に入ってからはデルタ株を中心とした新型コロナ新規感染者数の増加に伴う景況感の悪化がみられるが、米国全体では力強い実質国内総生産(GDP)の伸びや雇用の回復が見込まれるので、直近ではやや過熱気味だったインフレリスクを抑えるためにも、米国債・住宅ローン担保証券(MBS)の買い入れを縮小するテーパリングが年内に開始される可能性が非常に高まっていた。
そして2021年11月3日(水)にアメリカで行われたFOMCで米連邦公開市場委員会は量的緩和の縮小(テーパリング)開始を決定。こればで実施していた月間約1,200億ドル(約13兆円)規模の国債買い入れを、毎月150億ドルずつ縮小、予定通りに計画が進めば来年の6月にはテーパリングが完了となる。
目次
テーパリングがNYダウやS&P 500に与える影響、NYダウはどのくらい下落するのか?
過去にアメリカでは2008年のリーマンショック以来、金融市場の安定と雇用状況の改善を目指して米国連邦準備制度理事会(FRB)が量的緩和政策を実施していた。
その量的緩和政策の第3弾であるQE 3が米国経済の回復と共に2014年に終了、この時の国債やMBSの買い入れを縮小する「テーパリング」が同時に実行された。
■量的緩和政策 第3弾(QE 3)とは?
米連邦準備理事会(FRB)が2012年9月に開始した量的緩和策(Quantitative Easing)の第3弾。住宅ローン担保証券(MBS)を月額400億ドルのペースで雇用回復の効果が見込めるまで継続して購入することを決定、その後に決めた毎月450億ドルの国債の買い入れと合わせると月850億ドル規模となる大量の資金を市場に供給した。量的緩和策はFRBが米国債などを買い取り金融市場の資金量を増加させるというもので、政策金利の水準を引き下げて景気を浮揚させる金融緩和策とは異なる。
雇用環境など米国経済に回復の見通しがみられるようになったことから、QE3は2013年12月に縮小が決定、2014年10 月末に終了した。
参考資料 野村証券→https://www.nomura.co.jp/terms/english/q/A02059.html
テーパリング期間中のNYダウと日経平均の値動き
実体経済の回復に伴い、国債の買い入れが縮小されるテーパリングが行われた2014年1月~2014年10月の約10か月間では、NYダウは2回大きく暴落、日経平均も2回ほど明確に暴落するタイミングがあった。参考資料は三井住友DSから引用。
2014年のテーパリング(国債買入れ縮小)では、NYダウが平均8%前後下落した
■テーパリングで警戒すべきは開始直後と終了間際の下落
アメリカでは2014年1月~2014年10月にかけてテーパリングが行われた訳だが、NYダウはテーパリング期間中に大きく株価が下がるタイミングが2回以上あり、1回目の暴落は1月21日~2月4日の13日間で約7.11%の下落。2回目の暴落は9月19日~10月15日の26日間で約8.68%の下落率を記録した。
・2014年 1月21日~2月4日(約13日間)の下落率 約7.11%
・2014年 9月19日~10月15日(約26日間)の下落率 約8.68%
2014年のテーパリングで非常に興味深いのが、NYダウはテーパリングの「開始直前」まで株価が上がり続け、テーパリングによって一時的に株価が8%ほど下落するが、1か月以内には株価が戻り、その後に史上最高値を更新したということ。今回のテーパリングでも同じような値動きになる保証はないが、テーパリングで株価が暴落したら、アメリカ株を買うには良いチャンスかも知れない。
2014年のテーパリング期間中のNYダウの値動きについて ■NYダウはテーパリングの「開始直後」と「終了間際」に下落しやすい。 ■NYダウの下落率は平均して7~8.6%前後。 ■下落の期間は13日~26日前後。 ■S&P 500はテーパリング終了間際の2014年9月に最大9.50%下落。 ■2014年のNYダウはテーパリング開始直前まで株価が上がり続けた。 ■NYダウは一時的に下落しても、その後に株価が元の位置に戻りやすい。 ■テーパリングで国債の買い入れが減少しても、NYダウは史上最高値を更新する。 ■モルガン・スタンレーの予測でもテーパリングで10%程度の下落調整が入るのではないかと見ている。 |
個人的に2021年11月(予想)のテーパリングでNYダウは8%~10%程度の下落を想定、中国の不動産大手「恒大集団」の破綻問題次第では高値から15%程度の下落も想定の範囲で取引をしている。
【重要】2021年のテーパリングでNYダウやS&P 500は最低でも高値から8%~10%程度の下落を想定しておいたほうがいい。
最終的に今回のテーパリング(米国債の買い入れ縮小)で世界中の株価がどこまで下がるかは未知数だが、過去のチャートを参考にすると株価が下がる可能性が非常に高いので、11月~12月にかけて実施されるテーパリング相場に注意したい。
【FOMC】2021年のテーパリングの実施期間はいつまで?
11月3日(水)に行われたアメリカのFOMCでついにテーパリングの開始が決定、現状の予定では毎月100億ドル~150億ドルずつ国債買い入れを縮小していき、2022年の6月までにテーパリングが完了することになっている。
ただし、FRBのトップであるパウエル議長は、現在アメリカで発生している、消費者物価指数(CPI)が前年同月比で+6.2%という過度なインフレを警戒して、テーパリング(国債買入縮小)や利上げの時期を早めるのではないかという観測も出ている。
※当初は12月14日~15日のFOMCでテーパリングが発表されると予測されていたが、予想以上に雇用の回復が進む&供給不足によるインフレ懸念が想定以上に長引く話が出てきたので、想定より早く金融緩和の縮小が進む可能性が出てきた。
NYダウやS&P 500などテーパリング相場でアメリカ株を買うならいつがいいか?
株式市場で株価が下がり始めるのは機関投資家が保有株を売るタイミングが重なる1日、15日前後が多い。
そして株価が暴落する期間は15日、30日、45日と15日単位、例えば15日~16日に株価が下落し始めたら、最低でも株を買うのは月末まで待つのがベスト。
※2021年11月19日(金)にアメリカのSQがあるので、その日まで株価の調整が続くと見たほうがいいかも(11月3日(水)にテーパリングが実施された場合)
そして株や投資信託を購入する場合は、更に株価が下落するリスクを考慮して必ず数日かけて分散して買うこと。
分散投資をすればリスクを平均化できるし、市場の動向が急激に変化した時でも損切り対応がしやすいので、株価が下落トレンドを描いている間は一気に投資せずに、余力を残した状態で買っていくのがおすすめ。
NYダウは2022年後半くらいまで史上最高値を更新し続ける可能性があるので、テーパリングによる調整で株価が下がったら絶好の買いチャンス。短期的にNYダウは高値から10~15%下落するかも知れないが、新型コロナが完全収束すれば日本もアメリカもまだまだ株価が上がるので、暴落時には積極的に優良企業の株を狙っていきたいと思っている。
【注意】相場がクラッシュすると最大20%~30%の大暴落に発展する可能性もあるので、アメリカ株に長期投資をするならその辺のリスクも視野に入れて置くこと。ただ過去10年間のチャートを分析すると、NYダウの下落率は通常=6%~6.5%前後、テーパリング=8.5%前後、利上げ時=12%~15%、15%以上の大暴落となると○○ショック級の悪材料が必要なので、毎日の値動きを追っていれば対応はできるはず。
2022年以降も米国株が上がる理由
■2021年8月10日の米上院で1兆ドル(約110兆円)のインフラ投資法案が可決。 |
2021年11月のテーパリングで起きたNYダウの値動きについてまとめ
2021年11月3日(水)に米国で開催されたFOMCでついに国債の買い入れを段階的に縮小していくテーパリングが実施、このテーパリングによってアメリカでは国債購入額を毎月100億ドル(約1兆1,300億円)づつ減らしていき、現在800億ドル(約9兆円)規模の国債買入れを来年の6月までに終了する予定だ。
テーパリングの実施を受けたNYダウ株価の値動き
アメリカのNYダウはテーパリングの実施後も史上最高値を更新し続け、11月8日(月曜日)に36,565ドルの史上最高値を記録すると、その後は一転して調整期間に入り、南アフリカの新型コロナの変異種である「オミクロン」の誕生も相まって、11月8日(月)~12月1日(水)の約3週間で株価が36,565ドル→34,000ドル(約7%)下落した。
これは前回2014年1月のテーパリングとほぼ同じ下落率で、テーパリングの調整としては見事なほど下落率が一致している。
・2021年11月8日~12月1日(約24日間)約7.02%下落
・2014年1月21日~2月4日(約13日間)約7.11%下落
テーパリング調整後にNYダウは5.72%上昇、S&P 500は史上最高値を更新!
テーパリング調整後のNYダウは7営業日で約34,000ドル→約36,000ドルまで約5.72%上昇。アメリカ企業500社で構成される株価指数であるS&P 500にいたっては、12月10日(金)に4,712を記録して終値ベースで史上最高値を更新した。※S&P 500の取引時間中の最高値は4743ポイント(11月22日に記録)
アメリカではまだ約500兆円の投資マネーが眠っている
アメリカでは2020年から2021年にかけて新型コロナに対する経済対策として400兆円~500兆円規模のお金をばら撒いた影響で、株式投資のための待機資金とも見なされるマネー・マーケット・ファンド(MMF)の残高が約4兆5,000億ドル(約500兆円)前後で推移している。
この莫大な待機資金がアメリカの株価指数が下がるたびに押し目買いとして入ってくるので、NYダウやS&P 500は2022年以降も上昇トレンドが続くのではないかと見られている。
世界経済は新型コロナの変異種や中国の不動産バブル崩壊など色々とリスクもはらんでいるが、いまの株式相場はコロナショック前の常識が通用しないので(常に暴落リスクは意識したほうがいいが)、2022年にNYダウが38,000ドル~40,000ドル到達の可能性も否定しないほうがいいです。
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