東北電力が年初来安値を更新し続ける3つの理由、東北電力の株価はどこまで下がるのか?

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2021年10月1日(金曜日)の東北電力の株価は前日比▲19円(−2.31%)の803円で取引を終了。この日の東北電力は2020年3月のコロナショック時の最安値である826円を割り込み、3日間連続で年初来安値を更新。東北電力の株価が803円の安値を付けるのは2013年以来の出来事となった。

目次

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東北電力は何故年初来安値を更新してしまったのか?

今年の東北電力(9506)第1四半期決算(経常利益)は前年の半分程度で、冬場の電力需要が高まる時期に日本卸電力取引所(JEPX)の電力取引価格が上昇すると東北電力には負担増となり、ここ1~2年は業績があまり良い状態とは言えないのだが

それでもEPS(1株当たりの四半期純利益)は約19.71円年間配当は40円、10月1日時点の配当利回りは4.98%(電力業界 第2位)もあるのに、なぜ東北電力の株価は年初来安値を更新してしまったのか?

 

9月の中間配当落ち後に電力株が下がることは予想していたが、2021年9月28日(火)からの下落率は東北電力が−6.3%で、電力会社のなかでは一番の下落率となってしまった。※10月27日時点の下落率は−13.06%とさらに酷い状態に。

10月1日(金曜日)の日経平均は前日比▲639円(−2.3%)の28,771円と、3日間で1,411(−4.7%)の暴落。またここ数か月は原油・石炭・天然ガス価格など燃料価格の高騰で、電力株に逆風が吹いているのだが、それでも減配リスクのある中国電力より東北電力の株価が下落したのは理由は何があったのか?

東北電力が年初来安値を更新し続ける理由 その①「信用買い期日の強制決済が原因」

2021年1月の東北電力の株価は3月の配当取りに向けて約32%上昇したのだが、3月29日に1,117円の高値を付けた後は7月に840円付近まで約25%下落。9月の中間配当に向けて再び株価が暴騰するかと思われたが、今回はほとんど上がらず9月28日の権利付最終日を迎えた。

この9月末の中間配当はちょうど3月29日や4月13日前後の高値で信用買いをしている建玉が決済期日を迎える時期で、この「配当落ち後のポジション調整調」「信用買いの強制決済」が重なって需要と供給のバランスが崩れ、年初来安値を更新するような下落に発展したと思われる。

※他にも日経平均の地合いの悪さ(前日比▲681円(−2.31%))から短期の反発狙いでここ数日に東北電力の株を買った個人投資家が株を投げ売り(損切り)したのも、下げが加速した原因と考えられる。配当落ち後という買い方の需要が少ない時期に投げ売りが重なると必要以上に株価が下がることがある。

東北電力の下落は事前に予測ができていた

東北電力のような高値を取った後下落したままの銘柄は、株価が底抜けするともう一段下がる展開になるので、こういうチャートを形成している銘柄を買う場合は注意しなくてはならない。

もちろん株価が底値を維持してここから反発する可能性もあるのだが、通常であれば下落トレンド入り確認で空売りを入れる場面なので、逆張りをする場合はきっちり損切りラインを決めて取引しないと底なし沼に足を突っ込むことになる。

 

今回の場合は年初来安値の831円やコロナショック時の底値である826円を割り込んだことで、機関投資家の投げ売りが重なり、大底を割ってしまった。

 

現時点で東北電力の配当利回りは4.98%もあるので、減配(第1四半期決算の時点で利益余剰金 約5,500億円、現金が約2,000億円あるので減配の可能性は低い)や再びコロナショック級の大暴落が起こらない限りはこれ以上株価が下がることはないと思うが、信用買いの強制決済で「買い」と「売り」の需要供給バランスが崩れると簡単に底値を割ることは、覚えておいたほうがいいでしょう。

東北電力が年初来安値を更新し続ける理由 その②「高騰し続ける燃料価格」

これから東北電力の株式を買う場合に注意しなくてはいけない点が、6月~7月頃から続く、原油や石炭などの「燃料価格の高騰」である。

 

現在、世界では新型コロナワクチンの接種により、想定よりも早いスピードで経済が回復しているのだが、それに対して資源や人材の供給が全然追いついてなくて、中国や欧州などでは電力不足から資源価格の高騰が起きている。

 

特に欧州では電気の発電に使用される天然ガスの価格が年初から5倍以上に高騰しており、原油や石炭価格が前年の2倍以上に値上がり、電気料金の急激な上昇が社会問題化している。

日本の電力会社も原油やLNG(天然ガス)の在庫には余裕を持たせているが、東北電力や中国電力など原子力発電所が全て停止している電力会社では、この燃料価格の高騰が経営に打撃を与え、冬から来年の春頃にかけて東北電力の株価が800円を割る可能性も想定される。

 

大手電力会社では10月~11月の電気料金を2か月連続で値上げしているのだが、まだLNGや石炭の価格上昇は電気料金に反映されてない(※例えば1月~3月に燃料価格が上昇すると、電気料金に反映されるのは6月からになる)ので、第2四半期決算~第3四半期決算は厳しい内容になると思ったほうがいいかも知れない。

2021年10月12日(火)東北電力の株価が想定より早く800円割れ!

2021年10月12日(火)ついに東北電力の株価が800円を割り込み、前日比▲24円(−2.95%)の788円で取引を終了。この日は東京ガス西部ガスなど、LNG(液化天然ガス)の高騰懸念からかガス関連が軒並み年初来安値を更新、業種別では「電気・ガス業」が東証で値下がり率トップだった。

10月末から始まる第2四半期決算シーズンに向けて、東北電力の株価が800円を割ることは想定していたが、当初の予想より早いペースで防衛ラインを突破、恐らく今回の下落はセクター(電気・ガス業)全体の売り圧力に負けてしまったのだと考えられる。

これから第2四半期決算、業績の下方修正、テーパリング相場を乗り越えなきゃいけないのに、このタイミングで800円を割るのはちょっと厳しい。

2021年10月28日(木)東北電力の株価が730円割れ!

取引終了後に決算発表を控えた2021年10月28日(木)の東北電力の株価は、前日に東京電力の決算で「通期予想が670億円の黒字から160億円の赤字」に下方修正ということで、前場に726円の年初来安値を記録。

東北電力の株価は東日本大震災後の2012年以来、約9年ぶりに株価が730円の壁を割り込んだ。

【日経新聞】東京電力HD9期ぶり最終赤字に

東京電力ホールディングス(HD)の2022年3月期の連結最終損益は140億円前後の赤字(前期は1808億円の黒字)と、670億円の黒字を見込んでいた従来予想から一転赤字になることが分かった。最終赤字は9期ぶり。原子力発電所の再稼働が遅れ火力発電に頼るなか、燃料高で調達コストも一時的に膨らむ。

この報道を受けて東京電力の株価は2日間で約10%下落、東北電力の株価も2日間で40円以上(5%以上)下落したが、後場にかけては買戻しが進み、10月28日(木)の終値は737円で取引を終了した。

【追記】東北電力の第2四半期決算は比較的良好

2021年10月28日(木)の午後15時に発表された東北電力第2四半期決算は比較的良好で、4月~9月の経常利益(連結)は前年比▲50.4%減の399億円に落ち込んだが、通期計画の350億円に対する進捗率が114.1%とすでに上回り、さらに5年平均の73.8%も超えた。

また会社側が発表した10~3月期(下期)の経常損益も燃料高の影響で49.4億円の赤字(前年同期は130億円の赤字)が出るものの、通期では230億円の黒字(EPS 46.03円)を確保する見込みで、東京電力が赤字予想を発表した時は東北電力もやばいかも?と思ったけど、第2四半期の決算内容はほんと良かったと思う。

東北電力は原発が全停止しているのにも関わらずこの決算内容であれば、来年も減配するリスクは低そう。電力会社は燃料高の影響で4か月連続で電気料金を値上げ。東北電力だけでも一般的な家庭向けの電気料金が4か月で400円以上値上げ(5%~10%相当)になっているので、大きな災害や事故等が起こらなければ通期見通しは達成しそう。

決算発表通過で残る重要なイベントは「テーパリング」「MSCIの銘柄入れ替え」となった。

東北電力が年初来安値を更新し続ける理由 その③「東北電力がMSCIからの除外される可能性」

現在、東北電力はMSCIと呼ばれるモルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナルが提供する株価指数に組み込まれているのだが、大和証券では11月12日の銘柄入れ替えで、東北電力(9506)がMSCIから除外される可能性があると予想している。

■大和証券が予想するMSCI除外銘柄 17社

ピジョン <7956> 、THK <6481> 、ペプチドリーム <4587> 、久光製薬 <4530> 、東邦ガス <9533> 、東北電力 <9506> 、日本ハム <2282> 、カシオ計算機 <6952> 、ヤマダホールディングス <9831> 、日本精工 <6471> 、ユナイテッド・アーバン投資法人 <8960> 、エービーシー・マート <2670> 、ナブテスコ <6268> 、ハーモニック・ドライブ・システムズ <6324> 、スタンレー電気 <6923> 、三菱ガス化学 <4182> 、綜合警備保障 <2331>

 

今年の5月に九州電力と中国電力がMSCIから除外さてた時は株価が約3か月で20%前後暴落したので、東北電力もこのMSCIの入れ替えに注意しなくてはならない(※さすがに東北電力の株価がここから20%以上暴落することはないと思うが、10%程度の下落は想定しておいたほうがいい

9月の中間配当落ち後に大手電力会社のなかでは東北電力の下落率が約13%(※10月27日時点)と突出して高いので、明らかにMSCIの除外が材料として意識されている。

 

本当に東北電力がMSCIから除外されるかまだ分からないが、実際に銘柄がMSCIから除外されると底値から余裕で50円くらい下がる可能性があるので、11月12日の早朝に発表予定のMSCIに注意しなければならない。

東北電力の株価はどこまで下がるのか?

東北電力は節目である800円を割り込んだことで底なし沼に突入、10年チャートだと株価が700円~730円くらいまで下がる可能性が出てきた。10月26日時点の東北電力の株価は768円で配当利回り5.20%と非常に魅力的だが、これからテーパリング相場も待っているので、長期保有するなら株価が700円を割り込んでも大丈夫なようにポジションを組んでおきたい。

 

現在の東北電力はMSCI指数からの除外に絡んで、4社の機関投資家やヘッジファンドから売り仕掛けをされているので、個人投資家の思ってる以上に株価が下がる可能性に、留意しなくてはならない。

 

去年、電源開発が空売りのターゲットにされた時は、第2四半期決算の内容が比較的良かったにも関わらず、株価が1,352円(配当利回り 5.54%)まで売り込まれたので、最低でも東北電力は725円(配当利回り 5.51%)割れまで下がっても、おかしくはない。

東北電力の株価が一旦底打ちしたとしても、日経平均の暴落など「外部要因」よって更に株価が掘り下げる可能性も考慮すべき。

 

東北電力が700円(配当利回り 5.71)を維持できるかどうかは非常に重要で、このラインで機関投資家の買い支えが入らなければ、次は650円(配当利回り 6.15%)が射程に入ってくるので、11月12日のMSCI入れ替えと、11月のテーパリング相場(予定)が重要なイベントになってくる。

※2014年のテーパリングでは日経平均が高値から12%~14%暴落したので、今年の11月~12月はそれに備えないといけない。

東北電力が年間40円の配当金を減配する可能性はあるのか?

東北電力の2021年3月期(2020年分)の最終決算では、年間の配当支払い約200億円に対して、利益剰余金が約5,500億円(前年比+79億円)もあるので、余程の金融危機や大規模災害が起こらない限り、今期の減配リスクは低いと思われるが、世界的な燃料高が来年以降も続くと、来期がどうなるか分からない。仮に東北電力の配当金が40円→30円と、年間配当が10円下がっただけでも株価は四国電力の年初来安値(669円/年間配当 30円)まで下がる可能性も想定されるので、傷が浅いならすぐに損切りすべき案件。

※四国電力の669円は2021年1月4日の年初来安値。

 

四国電力の株価が2015年の2,000円から2021年1月に669円(−67.23%)まで売り込まれたように、いまの電力会社は「電気会社の自由化」「ESG投資の対象外」「原子力発電所の長期停止」「燃料費の高騰」と逆風ばかりなので、長期投資をするなら東北電力の株価が600円台まで下がることも否定しないほうがいい。

 

アメリカでテーパリングが開始されれば(来年には利上げも待っている)燃料価格の高騰が多少抑えられるはずだが、経済アナリストの間では原油相場が2014年以来の100ドル超えも予測されているので、原油や石炭、LNG(液化天然ガス)などの資源価格が必ず下がるか予測するのは難しい。

東北電力は10月~11月に一般家庭向けの電気料金を合計200円以上値上げしており、燃料価格の高騰をある程度は相殺できると思うが、3月に期末配当に向けてナンピンするなら、第3四半期決算(2022年1月末~)で業績を確認するまで様子をみたほうが無難。

 

今期の減配がなければ来年3月の期末配当に向けてまた800円~830円くらいまで上昇すると考えているが、日本株はこれからテーパリング相場を控え、日経平均は最大12%~14%下がる可能性があるので、そんなに急いで東北電力を買う必要もないと思います。

 

■次の記事 ↓東北電力を買うならテーパリング相場を待つべき!

→2021年のテーパリングが日経平均に与える影響、日経平均やTOPIXは下落するのか?

→2021年11月12日にMSCI指数から東北電力が除外される可能性が出てきたので、それまでに東北電力の株を買おうと思っている人は要注意!

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